僕に本を読むための忍耐力をつけてくれた人が死んだ

栗本薫
http://d.hatena.ne.jp/nakamurabashi/20090527/1243434229
http://d.hatena.ne.jp/wagamamakorin/20090527
http://d.hatena.ne.jp/kaien/20090529/p1
http://blog.goo.ne.jp/ikafurai007/e/7b912d081a13bb7a626df5d26e714777
http://kaoriha.org/nikki/archives/000627.html

色々な人が色々なことを書いている
彼女について、僕は多くを知らない
だから、彼女の訃報がこんなにも多くの人に何かを書かせている現状をうまく整理できていない

彼女は僕にとって重要な作家だ
だって、始めて読んだ小説は彼女のグイン・サーガなんだ

小学生の夏休みだった
何処にも出かける当てがない僕に親戚のおばさんが貸してくれた本がグイン・サーガだった

夏休みの長い時間をグイン・サーガに割けたのは幸せなことだった
なにしろ、ひたすら永い物語に浸っていられたのだから
長い文章にも負けない集中力を身につけられたのだから

グイン・サーガを読むうち、僕はページをめくることへの興奮を、恐怖を知った
初めのころに期待していたグイン・サーガの世界が、細緻まで描写されることの喜びと、
そしてそれが、期待していたものとほんの少しづつズレていくことへの悲しみ

僕が読書する時の、なんだか冷めた視点を決定づけたのは他でもない彼女だ


70巻を過ぎたころ、僕はグイン・サーガを読み続けることをようやく断念した
いつか、その物語が完結する日を思って、その日には全巻読み返してやろうと決意した
きっとその時には、装飾と倒錯でまみれた読むに堪えない文章も、あの夏休みの輝きを取り戻すと信じて

そして、そんな日は永遠に来ない
僕は初めて読んだ小説を読みきることさえできない

僕にとって栗本薫は、グイン・サーガで、ただそれだけで、そしてとてつもなく大きかった
彼女の他の功罪なんて知らない、そういうのはグイン・サーガだけで精いっぱいだ
もうグイン・サーガが完結する日は来ない、それだけで今夜は寝れそうにない


あー